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> 小谷の250字
> 2003年2月(28)
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ありがとう、ニューヨーク
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2003/2/7(Fri)
わからなければ臆せず訊き返せ。わかるまで訊き返せ。なんど訊いても追加チャージされるわけじゃない。滞在1週間弱にして開き直り、すでにいっぱしのニューヨーカーを気取っているところが僕らしい。
ここで生きていくには自分のスタイルを貫き通すのが最大の要件だ。気負わずに堂々と日本人として振る舞えばいい。そこに気づけばこの街が好きになれる。なるほど、世界一のmelting potとはこういうものなのかと感じた。
あと数時間でここを去る。望郷と名残り惜しさが複雑に交差する朝だ。ありがとうNY。
小谷隆
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幻の遺作はおあずけ
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2003/2/8(Sat)
上空1万mで操縦席のガラスにヒビが入って緊急帰還。翌朝は大雪で大幅な遅れ。飛び立ったのはいいが燃料不足のためミネソタのど田舎で補給。プライベートジェットは快適な反面、こんなリスクもつきまとう。
実はネットに接続できなくなった時のためにアテコミの原稿を1週間分用意して人に預けてあったが、何とか連載を切らさない時間に戻ることができた。シャトルの事故の直後だからずいぶん寿命の縮まる思いもした。まったくもってシナリオどおりにいかないのが人生。ともあれ公開することのなかった幻の遺作はおあずけとしよう。
小谷隆
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ニューヨーク後日談〜東京子守唄
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2003/2/9(Sun)
滞在中の250字を読んだ人から今の僕の「吸収力」は傍から見ていて恐怖を感じるという感想が寄せられた。しかし実態は逆で、何かを吸収していたというよりは街の繰り出す課題に自分の中から答を出し続けていたのだと思う。
一方、慣れすぎた東京のグルーヴは今や子守唄にも等しい。目覚めてもなお眠れ眠れと囁きかける声に、僕は抗うことなく黙ってその膝枕に顔を埋める。昨夜は12時間も眠った。時差ボケとは少々様相が違う。街に圧倒されないよう眠っている間まで緊張していた身体が矛先を失ってしまったことによる脱力感だ。
小谷隆