ホーム > 小谷の250字 > 2003年8月(31)


<< 今や日常の軽井沢 >>


2003/8/4(Mon)

 この地に避暑を求めるようになったばかりの頃は空気にしろ風景にしろ音にしろ五感に触れるすべてのものが物珍しく、旅愁のような感情が湧いていろんな人にメールをしたりもしたものだが、足かけ10年も訪れて深い森の獣道まで知るようになると「あやしうこそものぐるほしけれ」のような気持ちも失せるし、まして今年は持ち込んだ仕事も多すぎてなかなかプライベートのメールを開く気にもなれずにいる。
 多くの音信をいただきながら気の利いた返事ひとつできずまことに申し訳ない。もはや軽井沢は僕の日常の一部になってしまったのだ。
小谷隆


<< 涼気を都会に持ち帰る方法 >>


2003/8/5(Tue)

 長くここに滞在するとき、車の中ではなるべく決まったCDをかけるようにしてきた。ここ数年は高中正義の「虹伝説」がヘビーローテーション。どこへ移動するときもしつこいほど流してある。
 都会の熱気の中に戻ってふうふう言っているときに少しでもこの涼気を思い出すよすがになればと願ってのことだが、これがけっこう効果的だ。うだるような駐車場でエアコンをフル回転させながら「虹伝説」をかけて眼を閉じると、条件反射のように浅間山の威容とそれにつながる深い森の緑が瞼の裏に蘇る。木の葉の擦れ合う音さえ聞こえるのだ。
小谷隆


<< 続・眠れぬ理由 >>


2003/8/6(Wed)

 不眠の最大の原因は眠るべき時間に脳が活性化してしまうことにある。休もうという意思とは裏腹に意思の主である脳髄が次の思考に備えて盛んにエネルギーを供給させ、元気になった脳は思い出さなくてもいいことまで記憶の中からひっかき出して不必要な思考を始めてしまう。意識しないようにすればするほど無意識の領域に追いやられた思考はいよいよフル回転し、意識の上では眠りたいのにますます眼が冴えるという不可解な状態になる。
 思えばこんな夜中にコラムを書くことじたい良くない。といって自分の時間はここしかないのだが。
小谷隆


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