ホーム > 小谷の250字 > 2003年7月(31)


<< 表現はただ一人のためにあれ >>


2003/7/4(Fri)

 八神純子さんはまだライブ慣れしていなかった頃、客席の誰かを見定めてその人に語りかけるつもりで唄ったという。アガリ防止の秘策ではない。これはアーティストが持つべき基本姿勢である。
 オーディエンスは百万人いてもしょせん個の集まりだ。同じものに触れても感じ方は千差万別。しかし、だからといって百万人に共通して響くメッセージをしようとしたらその表現は希薄なものにならざるを得ない。
 コミュニケーションの基本は常に一対一である。たった一人に対する真剣で切実なメッセージが結果として万人の共感をよぶのだ。
小谷隆


<< あなたはいま何時ですか >>


2003/7/5(Sat)

 年齢を3で割ると人生における時刻がわかるという。小6なら夜明け前の午前4時、働き盛りの36歳で正午である。しかしこれでは72歳で人生が終わってしまう計算になる。
 ある週刊誌で年配の著名人へのインタビュー連載を担当していた記者はこのほどその連載をまとめたアンソロジーの後書きで、いっそ3でなく4で割ってみたらどうかと書いている。なるほどそれなら僕もまだ午前10時前。些か惰眠を貪ってしまった感はあるが、まだ午前のうちにテニスで汗を流すことぐらいはできそうだ。それからゆっくりランチをとってたっぷり午後を楽しもう。
小谷隆


<< 元手53億円でいくら稼げるか >>


2003/7/6(Sun)

 人体は53億円、と米誌が報じた。人体を体液や繊維、免疫細胞など再生可能な部分に分解した場合、1体当たり4500万ドル(約53億円)になるという。臓器より骨髄(2300万ドル)、DNA(970万ドル)、免疫細胞の抽出(730万ドル)などが高いらしい。
 興味深いのが生殖関係。女性が8年間に32個の卵子を売却すれば22万4千ドルになるが、男性が同じ金額を稼ぐには精子を月に12回、20年間も提供する必要がある。やれやれ。
 それにしても、53億円もする自分が生涯に稼げる金額を計算してみるとあまりに哀しい結果になる。この上は金額以上のものを遺すしかないだろう。
小谷隆


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