ホーム > 小谷の250字 > 2001年12月(31)


<< 失敗例の埃を払う >>


2001/12/1(Sat)

 病床では外界の刺激もなく250字コラムのストックは目減りするばかりかと思いきや、面白いように溜まっていく。縁起でもないがいま逝っても連載はしばらく続く。
 退屈さは内面を活性化させ、しばらく意識に上らなかったものにも光を当てる。多くは過去の失敗の残骸だ。そういうものを丁寧に取り出して埃を払ってやると、また別の用途に使えそうな気がしたりもする。時が未成熟だった頃に失敗したものの中には、現代なら大きな成功の種になってもおかしくないものが見つかる。若さゆえに潰えた恋が年を経て実ることもあるのと同じか。
小谷隆


<< のどかな島国にJ.ハリスンの訃報 >>


2001/12/2(Sun)

 ジョン=レノンがストーカーの凶弾に倒れたのも、ツェッペリンのジョン=ボーナムが悪酔いの吐き損ねで窒息死したのも年の暮れだった。そして今年、ジョージ=ハリスン逝く。58歳。これでビートルズはたった2人になってしまった。
 朝からテレビも点けず、英文サイトでこの巨星の追悼特集ばかり追いかけていた。CNNもNPRも特番を組んでいた。おかげで日本中が新宮誕生のニュースに沸きかえっていたことをとうとう夕方まで知らずにいた。
 僕は何と狭く、そしてのどかな島国に生まれ育ったのだろうとつくづく思う。
小谷隆


<< スターはどこへ行った? >>


2001/12/3(Mon)

 ゆうべは書斎から初冬の明るい月夜を眺めていた。空気が澄んで空が蒼くさえ映る。月光の眩ゆさで見える星の数はかなり少ない。
 その道の星たる人を文字通り「スター」という。そういえば昨今、音楽における「スター」はどこへ行ってしまったのか。中途半端な「アイドル」たちはどれも半月ほどの明かりでさえ翳んでしまいそうなほど危うい存在だ。
 満月の明るさの中にあってもオリオンの壮大な図は明らかだし、おおいぬ座のシリウスは堂々と全天の恒星で随一の光をたたえている。そんな「スター」を探そうとしたが今日は曇りだった。
小谷隆


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