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2002/12/15(Sun)

 新作「運命」がクランクインした。激務の合間を縫っての撮影になるが、今年中にどうしてももう1つ手をつけておきたかった。今回は短編といっても出演者が複数になるし、現在のインフラからするとかなりの「大作」の部類といえる。前作のように1日ですべての素材を撮影し切るというわけにもいかない。
 シナリオについてもかなり綿密なものを用意した。インサートカットの詳細やBGMのタイミングまで書いてある。しかし毎度のことだが撮影の現場で新たなアイデアが浮かぶと臨機応変に書き換えてしまうので、もはや最初の原型からはかなりかけ離れたものになっている。いざカメラを回してファインダーの画を眺めてみると、紙の上で想像していたのとは違うものが見えてくる。実のところそうした現場での発見こそが良い作品を作るエッセンスになっていると思う。ただそれは事前に綿密なシナリオを準備する過程でいろいろなことを煎じ詰めた結果として生まれてくるアイデアであるともいえる。
 それぐらい煮詰めたシナリオがあると、出演者としてもイメージが湧きやすいようだ。たとえ現場で変更があっても、確固たる柱ができあがっているとどんなことにも臨機応変に対応できる。実際、黒柳陽子さんも再三の変更にもかかわらず快く対応してくれた。
 さて、今回は音楽でもちょっとした面白い試みをしようと思っている。これも撮影しながら思いついたことだが、全編、ベートーヴェンの9つの交響曲の中で僕の好きなハイライト部分をBGMに採用することにした。とはいえベルリンフィルやウィーンフィルの音を使うわけにもいかず、自前のシンセサイザー音源の演奏になる。パソコンでどこまで本物っぽいオケの音を出せるか、これも大きなチャレンジだ。何しろ楽器の数が多いのでたった数小節でも打ち込みに数時間かかるが、これはこれで編曲の勉強にもなるから一石二鳥かもしれない。
 ただでさえ公の時間も慌しい年の瀬。音楽においてもこの映画がクランクアップするまでの間に別の映像作品を撮るかもしれないし、音楽制作者として数曲の新曲も発表することになるだろう。しかし人間はえてして忙しいときの方が仕事が速いものだ。無理のきかない歳にさしかかってきたとはいえ、まだ不惑の歳までには少々時間がある。今年いっぱいは全力で駈け抜け、電車のうたた寝で痛めた背筋も走りながら治していこうと思う。


小谷隆


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